『ディオグネートスへの手紙』の著者

Epistle to Diognetus

概説

キリスト教信仰に興味を持つディオグネートスなる人物に宛てて書かれた手紙。使徒教父文書の一つ。2~3世紀頃の成立か。
全12章で構成され、11~12章は1~10章との文体や思想の違いから、別人(ヒッポリュトスによるものとの説が有力)の手になるものが後に付け加えられたものと思われる。
受取人であるディオグネートスなる人物についてもその素性は一切不明である。皇帝マルクス・アウレリウスの師である同名のストア哲学者や、エジプトの大祭司だったクラウディウス・ディオグネートス(197~202年)らと同定する試みがなされているが、特段の根拠があるわけではない。

著者について

マルキオン、その弟子アペレス、アリスティデスクアドラトゥス殉教者ユスティノスパンタイノスヒッポリュトスなど様々な候補が挙げられているが、未だ推測の域を出ない。
その洗練された文体から推測するに、高度な教養を持った人物だったと思われる。

内容

異教徒とユダヤ教徒を論駁し、キリスト教信仰の卓越性を論じた護教的文書である。
構成としては、以下の12章から成る。

1章 序文
2章 異教徒の偶像礼拝について
3章 ユダヤ教の礼拝について
4章 ユダヤ教の種々の宗教規定について
5章 キリスト教の優越性について
6章 魂と身体の比喩
7章 キリスト論
8章 神の啓示の偉大さについて
9章 神の愛とあわれみの偉大さについて
10章 信仰への勧め
11章「言葉(ロゴス)」について
12章 パラダイスと真の知識について

前述の通り、11~12章は思想・文体ともに相違が多く、別人の手になるものが付け加えられたものと思われる。